八方尾根とは、後立山連峰・唐松岳のピークから四方八方に広がる尾根を利用した中急斜面主体のビッグゲレンデだ。その八方尾根の麓に、4つの八方温泉がある。第一郷の湯、第二郷の湯、みみずくの湯、そして今回紹介するおびなたの湯だ。「おびなた」とは、「小日向」のことだ。正面に小日向山があるからだろう。ここは、北股入と南股入という松川の2つの支流の合流点になっている。 白馬岳を登山する際の最もポピュラーなルートは大雪渓を経由するルートであるが、そのルートの起点は猿倉。猿倉から最も近い場所にある温泉がこのおびなたの湯であるから、ここにはたくさんの登山客がやってくる。 おびなたの湯は、端的に言えば露天風呂だ。露天風呂はあるが、内風呂はない。もちろん脱衣室も屋外。屋根はあるが、壁はない。私が10年前に来た頃は、洗い場もなかったほどだが、今はかろうじて3箇所の洗い場がある。 そんなわけだから、とにかく外気に触れながら、気持ちの良い空気を吸いつつ、露天風呂を楽しもう。湯は無色透明。湯船の温度計は43℃を示しているが、湯はかなり熱い。湯船は三日月形をしており、中央には大きな岩があり、その岩の向こうは女湯である。岩からは湯が滝のように流れ、その流れに沿って、温泉の成分が付着しているのが分かる。 湯船の底はモルタルになっており、ひび割れた部分を補修した跡が無残に残されている。できれば、底もすべて石を敷き詰めて欲しかったところだ。 洗い場は僅かに3箇所しかない。なのに、なぜかリンスインシャンプーとボディーシャンプーは合計12ボトルも用意されている。椅子は5個。洗い場で使用した湯水の排水は、露天風呂側には流れてこないようになっており、よく考えられている。 そして不思議なのが、ハエたたきだ。なぜか5個も置かれている。後で帳場で聞いたのだが、夏になるとアブの飛来がひどいのだと言う。最近までは蚊帳のように網で露天風呂全体を覆っていたのだそうだ。 おびなたの湯の営業は冬期を除く期間だ。このため、営業期間中の周囲は緑がいっぱいだ。女湯は川に面して設置され、男湯は道路に面して設置されているが、男湯でも川の流れる音がよく聞こえる。大雪渓の雪解け水はすべてここに流れてくる。自然に囲まれた露天風呂。これぞ日本の温泉だ。 おびなたの湯の定員は24人。棚が24人分しかなく、脱衣室が6人程度のキャパシティー、湯船が15人程度、洗い場が3人という計算だ。 ちなみに、おびなたの湯はアルカリ性単純温泉(アルカリ性低張性高温泉)で、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進に効くという。 白馬岳登山の締めくくりとして、おびなたの湯は小さいながらも自然をいっぱいに蓄え、訪れる人を待っている。 大人500円、小人(3歳以上)250円 |
||||
住所 | 入浴料 | サウナ | TV | 営業時間 | 定休日 |
長野県北安曇郡白馬村 北城9342-8 |
500円 | × | × | 10:00〜18:00 (最終受付17:30) |
無休 (4月12日〜11月上旬まで営業) |
※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2008年9月13日(土)