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白馬八方温泉 第二郷の湯
(Hakuba Happo Onsen Daini Satonoyu)



 八方尾根にはたくさんの思い出がある。
 1998年の長野オリンピックの前後にはたくさんの外国人が当八方尾根スキー場に来ていた。彼らのほとんどは欧米人であったが、欧米にあるスケールの大きなスキー場に比べて、日本のスキー場はさぞかしせせこましいと感じたことだろう。
 そんな彼らの中で、スキーはそこそこに、温泉を楽しんでいる人達もいた。スキーを楽しみ、その後に温泉を楽しむという日本のスキーリゾートの流儀をそのまま丸ごと体験していたのだ。
 ある日、私が浴室から脱衣室へ出てくると、これから温泉に入ろうという欧米人の若者がそこにいた。彼は言う。「タオルあるか?」と。私を温泉のスタッフと思ったのか、あるいは温泉ではタオルは据え置かれているものと思ったのか、あるいは私がタオルを貸してくれるような親切な日本人に見えたのか。
 温泉を全く知らない欧米人が、日本の温泉に入ろうというその度胸には感心させられる。私が、ウズベキスタンのブハラへ行って、そこで公衆サウナを発見したとき、とても入る勇気がなかったのとは対照的だ。
 ともあれ、八方尾根の温泉には、世界中のスノーフリークを引き付ける「日本」があるのだと感じた。
 今回紹介する温泉は、そんな欧米人に出会ったことのある第二郷の湯である。この温泉は、数ある白馬の温泉の中で一番規模が小さい。そのため、この温泉へスキーシーズンの夕方に行こうものなら、大変な混雑を覚悟しなければならないだろう。脱衣室のロッカーは27個、浴室の洗い場は8箇所、浴槽(内湯のみ)のキャパシティーは10人程度しかない。しかし。建物は木造で、あちらこちらに無垢の材木が露出していて、とても趣のある造りだ。
 浴室の中に入ると、ど真ん中に大きな丸柱があるのがわかる。この柱は、この建物の一番重要な構造体であり、背骨のようなものだ。その柱を取り囲むように六角形の特徴的な浴槽がある。浴槽はヒノキでできており、その木は温泉の成分で変色してしまっているようだ。
 中央の丸柱には仕掛けがあって、中から湯がこんこんと流れ出ている。その湯はまず、柱の周りにある樋(白い石が敷き詰めてある)にたまり、そこからあふれ出るようになっている。あふれ出た湯は柱をつたって浴槽に流れ込んでいる。
 湯は熱め。湯気で浴室の中は真っ白になっている。おかげでどこに洗い場があるか分かりにくいが、洗い場は8箇所が浴槽の周りに配置されている。洗い場にはシャンプーとボディーシャンプーが完備されているが、これらはいい匂いがして気持ちいい。
 第二郷の湯は白馬で一番小さい温泉かもしれないが、この小さな空間に身を置いていると、体の芯から解きほぐされていく気がする。中央にある柱と、そこからあふれ出る湯、柱を飾るタイルを眺めながら、時が経つのを忘れてしまう。
 八方温泉は第二郷の湯の他に第一郷の湯、みみずくの湯、おびなたの湯がある。いずれも無色透明なアルカリ性単純泉で、pHが11もあるらしい。ちょっと恐ろしい気もするが、これが美肌を作るのだという。他の八方温泉もどんどん紹介していきたい。


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
長野県北安曇郡白馬村北城5170 500円 × × 12:00〜21:00 火曜日(7月下旬〜8月中旬と12月下旬〜3月末は無休)

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2005年12月29日(木)



 
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