塩尻から松本を通り、大町、白馬、小谷、糸魚川へと抜ける国道148号線沿いには、スキー場銀座の如く大小のスキー場が並ぶ。それらのスキー場の北端にある白馬コルチナ国際スキー場よりさらに国道を北上すると、道の駅・小谷がある。この道の駅自体が温泉施設なのであるが、道の駅の近くには、島温泉と来馬温泉(くるまおんせん)の2つの温泉がある。今回紹介するのは、そのうちの一つである来馬温泉・風吹荘(かざふきそう)である。「風吹」とは、近くにある風吹岳・風吹大池にちなんだものと思われる。 風吹荘は、田舎の中の旅館といった風情で、利用しているのはスキー客ではなく、登山客か、地元民のようであった。ちなみに、風吹荘は村営となっている。建物の外観はご覧の通りかなり古く、味わいのあるものとなっている。 屋外には足湯の設備もあるが、なぜか閉鎖されている。寒いからだろうか。足湯の設備を良く見ると、周辺のモルタルが変色してしまっている。温泉の成分によるものだろう。これはかなり期待できる温泉かもしれない。 中に入ると、フロントがあるが、誰もいない。フロント前には休憩スペースがあり、風呂上りにくつろぐことができる。湯銭は奥に進んで厨房で支払う。さらに奥へ進み、階下へ向かうと浴室の入口となる。 途中の廊下には、壁面のあちらこちらに白馬や雨飾山のものと思われる写真が飾られている。風吹荘のご主人が周辺の自然を満喫していることが容易に想像できる。 風吹荘の浴室は極めてシンプルである。浴槽と洗い場があるだけである。洗い場は7箇所ほどあるが、どれもこれもカランが古く、圧力も低い。リンスインシャンプーとボディーソープは完備されている。 浴槽の湯は赤茶けた色で、かなり熱い。風吹荘の説明によれば、湯は56℃のものと35℃のものを混合しており、源泉かけ流しであるという。したがって、温度制御はなんらされておらず、自然のままの湯温を味わうことができる。 というわけで、今日は水圧の低いカランと格闘しながら、洗い場で体を洗うことよりも、この温泉を湯船でゆっくりと楽しむことを重視すべきだと考えた。 しばらくすると、ある客が恥ずかしげもなく民謡を大きな声で歌い始めるではないか。きっと常連に違いない。民謡が飛び出すほど、この湯には脳を陶酔させる薬味が備わっているのだろう。 隙間があけられた窓からは、姫川の流れと、対岸の山が見える。風吹荘は、ちゃんと一番眺めの良い場所を浴室にしているのだ。 風呂から出てくると、厨房では何やら食事の準備をしていた。どうやら地元の人たちの宴会が予定されているらしい。地元の人たちは、村営の旅館で温泉に入り、仲間と一杯やってから帰る。慌しくスキーをしにやってきて、1泊2日で帰ってしまう我が家とは、時間の使い方が違うようである。ここには風吹荘の時間が流れている。 ちなみに、来馬温泉・風吹荘の湯は、ナトリウム・カルシウム−炭酸水素塩・塩化物温泉(中性低張性高温泉)で、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後の回復、疲労回復、健康増進、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病に効くという。 来馬温泉・風吹荘は、白馬からは国道148号線を北へ向かって約20kmのところにある。スキーに温泉はつきものであるが、スキー場近くの混雑した温泉とは一味違った趣を堪能できる。できれば食事をするか、宿泊をして、郷土料理(蕎麦、山菜、岩魚の骨酒!)を味わうと良いだろう。 |
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住所 | 入浴料 | サウナ | TV | 営業時間 | 定休日 |
長野県北安曇郡小谷村北小谷1283-1 | 400円 | × | × | 10:00〜20:00 (入場は19:30まで) |
火曜日 |
※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2007年3月10日(土)