カルシューム温泉
(Karushu-mu Onsen)



 カルシューム温泉。この名前を聞いたならば、銭湯ファンならずとも興味がわくのではないだろか? 「カルシウム」ではなくあえて「カルシューム」と名乗っているところも銭湯ファンの気持ちを沸きたてずにはいられない響きをもっている。浴槽からカルシュームが湧き出ているのだろうか? もしくは、バスクリンのように、店主が入浴前に「カルシューム」を入れているのだろうか? などと妄想をふくらませつつ向ったこの「カルシューム温泉」。場所は、以前紹介した銭湯「千歳湯」さんの近く、千歳湯さんと同じ昔の花街エリアにある。


 まずは、「ゆ カルシューム」と書かれた看板が目に飛び込んでくる。ひかえめなエメラルドグリーン色のペンキを塗った外観、レトロな窓枠。男湯と女湯の間におかれたベンチ。もう、この外観だけで充分魅力的であり、気持ちを満たしてくれるではないか。


 中は、もちろん!期待通りの番台形式であるが番台に人がいない。「あれれ?」と思ったら、男湯の方からちょっとマッチョなおじいちゃんがやってきた。なんでも、ずっと番台を守ってきた奥さんが亡くなり、今はこのおじいちゃんが一人でこの銭湯を守り続けているということであった。「番台に座るのは慣れんけん(慣れないから)。」恥ずかしがり屋のご主人である。


 脱衣所には大きなソファが置かれ、床にはゴザが敷かれている。ちょうど夕日が差し込み、出窓に置かれた観葉植物も気持ち良さそうだ。そして、玄関からまっすぐに風が抜ける開放感、明るくて清潔で心地よい空間だ。


 浴室には、真ん中に楕円形の大きな浴槽。なんとライオンの顔の蛇口からお湯がでているではないか! カッコイイ! 細長いタイルも心憎い演出である。左奥には扇形の薬湯。右奥にはポリ浴槽の中に水を入れ「水風呂」としている。壁にはペンキ絵等はないもののご主人が、シーモール(下関最大のショッピングモール)からもらってきたという特大ポスターや植物が置かれている。ご主人の「お客さんに銭湯でくつろいで貰いたい」という思いがひしひしと伝わってくる。この日は、常連のお客さん3人が、のんびりと入浴。
ぬるめの薬湯にゆったりつかり、皆さんゆうに1時間は滞在という感じである。


 さて、入浴後、ご主人からお話を聞いたところ、この銭湯は100年以上の歴史を持つ下関で一番古い銭湯なのだそうだ。また、昔はカルシウムを含んだ温泉を使っていたためこの名前がついたのだが、カルシウムを含んだ水(硬水)が女性の肌にあまり良くない、特に花街という土地柄もあってやめてしまったのということだった。「今のご時勢だったら、温泉もよかったかも」とご主人は語っておられたが、なんとこの銭湯は薪で沸かされているとのこと。お一人で守っていかれながらも、薪でお湯を沸かされているとは。大変な労力で、この銭湯を支えてらっしゃる姿に頭が下がりっぱなしである。


 趣きある雰囲気を残しつつ、街の人々に愛される銭湯。足を運んだならぜひ、ご主人との会話も楽しんでほしい銭湯である。

唐三彩?と思わせるライオンの蛇口
若き日の「早見優」に見守られながらマッサージを受けることができます。この特大ポスターもシーモールで貰ってきたそう 年代モノの体重計。「これだけ古くて立派な体重計はなかなか下関を探してもないよ」とご主人。 古いレンガの煙突。これだけでも銭湯遺産


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
山口県下関市上新地町3-1-35 360円 × × 15:00〜20:00 毎月1日
13日、23日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2009年某月某日



 
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