千歳湯
(Chitoseyu)



 銭湯の暖簾をくぐる前から、期待で胸が高鳴ってくる。千歳湯はそんな銭湯だ。まず、銭湯へ向うまでの路地がたまらなくいい。昔、花街だったこの場所は、数々の映画のロケにも使われたらしく、細い路地には風情ある木造建築が残っている。そして、坂道。路地からは、いくつものまた細い坂道が続いて、引き込まれてしまいそうな気持ちになってくる。


 モダンなガラス窓とタイルに心惹かれながら、暖簾をくぐる。白熱灯がぼんやり灯った細い廊下を通り抜けると、番台と脱衣所へ。番台でにこやかに出迎えてくれる女将さんの笑顔、そして脱衣所には、生け花や盆栽、金魚の水槽などなど。なんだか田舎の親戚の家に来たようなアットホームな雰囲気に、たちまちリラックスした気分になる。


 丸籠の脱衣籠と年代モノのロッカー。このロッカーは、数字ではなく「いろは」で書かれているのもいい感じ。文字もなかなか味わい深い。


 浴室は、真ん中に大きな楕円形の浴槽と、奥に人2人が入れるほどの薬湯。


 まずは、大きい浴槽へ。と、思ったらたまらなく熱い!! 躊躇していると、常連さんが「気つかわんでええけん、水いれたらええわ〜 」と言ってくれたが、いやはや、ちょっとやそっとの水では、太刀打ちできないほどの熱さで、とても入れそうにない。少しぬるめの漢方のにおいのする薬湯に避難すると、今度は「足ゆっくりのばしたらええよ〜」と、またもや常連さんが気を使ってくださる。


 いや〜、女将さんだけでなく常連さんもやさしい。うれしくて、ついつい長湯をしていたら、あの熱いお湯にも最後にはつかれるようになっていた。


 「ゆっくりできましたか~?」女将さんが、湯上りで聞いてくれる。「いや〜、この建物といい、雰囲気といい、最高です。本当にゆっくりできました。」


 「そりゃ良かったです。続けていくのは大変ですけど、皆さんが喜んでくださるからね〜。」


 下関の銭湯遺産とも言える「千歳湯」。久しぶりに長湯して、シワシワになった指先を見ながら、まだまだ頑張ってほしいと思わずにはいられないのであった。
木枠のガラス窓とタイルがモダンです。
千歳湯盆栽。
千歳湯金魚。のどかだね〜。
のれんの下にも植栽が。女将さんの心遣いが伝わってくる。 女湯だけにあるアプローチ。路地沿いに半楕円状に建っているために作られたそう。 ロッカーの毛筆文字がいい。ちなみに男風呂は数字。
小さっぱりした暖簾にひかれるお好み焼き屋「中山食堂」。次回は、ぜひこちらにも寄りたい。 多くの映画のロケが行われた路地。天才写真家アラーキーもここでパチリ! 千歳湯界隈の石段。


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
山口県下関市上新地町4-4-7 360円 × × 14:30〜22:00 日曜日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2008年某月某日



 
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