玉菊湯
(Tamakikuyu)



 今回は、都営三田線・白金高輪駅に降り立つ。
 白金という地名は、応永年間(1394年頃)にこの地を開いた南朝の武士・柳下上総介が大量の銀(しろかね)を所有していたことから、「銀長者」と呼ばれ、後に「白金長者」と呼ばれたことに由来するらしい。つまり、白金とは、「しろがね」ではなく「しろかね」が語源であり、プラチナのことではなく銀のことなのだという。
 一方、高輪という地名は、このあたりにかつて高いところから縄を引っ張ったようにまっすぐな道があったことに由来するらしい。
 さて、今回紹介する銭湯は、麻布にも近い場所にある白金の玉菊湯である。白金高輪駅から徒歩約10分で白金商店街の北詰に到着するが、玉菊湯がどこにあるのかは少々わかりづらい。ちょうど玉菊薬局なるドラッグストアーが目立つので、そちらの方へ向かっていくと、玉菊薬局の看板の背後に玉菊湯の案内看板があるではないか。玉菊薬局から西へ15mくらいのところに、玉菊湯への入口に通じる狭い通路を発見した。
 今日も暑い。むしむしする気候だ。こんな日に銭湯に入れるのは、本当に日本にいられるからだろう。しかも今回紹介する玉菊湯は、黒湯である。あ〜ありがたや。
 さて、玄関を入ると、奥にフロントがあり、かなり若い(ギャルに近い?)女将さんが座っている。その左側には、かなり高級そうなマッサージ椅子(利用料10分200円)があり、飲み物類、石鹸類の販売も完備されている。ちなみに缶ビール(350ml)は250円というお手軽価格だ。
 フロントの右側が脱衣室への入口である。脱衣室も浴室も、標準的な東京の銭湯に比べると少々狭いようである。脱衣室には通常の四角いロッカーが27個あり、スーツをハンガーにかけられる細長いロッカーも8個用意されている。ドライヤーは2個(利用料3分20円)あり、洗面台も2基ある。
 玉菊湯では、プライベートロッカーは、なんと1ヶ月100円で提供されている。プライベートロッカーというのは、基本的には通常のロッカーよりもかなり小さい。この理由は、プライベートロッカーは、洗面器、シャンプー、リンス、石鹸等を入れるためのものであり、タオル、脱いだもの、着替え等を入れるためのものではないからだ。
 黒湯については、すでに竹の湯(港区)の取材でその由来について報告したが、脱衣室に掲示されている黒湯の説明によれば、黒湯とは有機物をふんだんに含む可能性があり、何らかの効能が期待されているものなのだという。というのは、日本の法律によれば、温泉とは、無機物が対象物質であり、有機物の濃度は測定しないことになっているので、有機物があっても、それを理由に温泉であるという表示も、効能の表示もできないのだという。現に玉菊湯は温泉の指定を受けていない。
 海外では、有機物による効能を謳っている多くの温泉が存在するという。例えば、ある種の有機物は、女性ホルモンの働きをするので、肌を美しくする効果とか、妊婦にも良い効果を与えるのだという。海外では、そのような効果が経験的に知られれば、それを効能として表示しているが、日本の法律はそれを一切許さず、単に一定量以上の無機物が含まれていれば、それに対応する効能を無条件に表示できるという方式を採用しているとのことである。
 説明が長くなってしまったが、浴室のスペックを書いておく。浴室には15ヶ所の洗い場があり、カランは銭湯には珍しくサーモスタット混合栓となっている。シャワーブースは1箇所確保されている。洗面器は黄色い桶で、玉菊湯のネーミングが入っている。
 浴槽は2槽。一方はマッサージエステという無色の湯の浴槽で、もう一方が黒湯の気泡湯である。サウナ、水風呂はない。前者は湯温が40℃を示しているが、多分45℃はあるだろう。後者は44℃との表示である。いずれにしても、両方ともかなり熱い。しかし、これに注水して薄めようという常連客は誰もいない。あ〜今日も熱い湯で半身浴である。
 玉菊湯にはあちこちにいろいろな注意書があるが、中には英文併記のものもある。そう言えば、麻布一帯は各国の大使館が多く点在し、外国人の居住者も多い。英文併記とは国際色豊かな銭湯である。但し、私が入浴中は、外国人は入浴していなかった(と思う)。
 白金は、金持ちの町というイメージがあるが、玉菊湯は結構繁盛している。やっぱり東京というのは基本的には庶民の町なのだ、などと勝手に納得してしまった。


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
東京都港区白金3-2-3 400円 × × 15:30〜23:00 日曜日、木曜日、祝日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2005年7月11日(月)



 
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