麻布黒美水温泉 竹の湯
(Azabu Kokubisui Onsen Takenoyu)



 1年ぶりに麻布十番へやってきた。前回は、越の湯を紹介したが、今回は南麻布にある麻布黒美水温泉竹の湯(あざぶこくびすいおんせんたけのゆ)を紹介する。
 都営大江戸線・麻布十番駅から、麻布十番の商店街を越え、南麻布に入る。商店街の町並みは、次第に住宅街に変わっていく。この住宅街は、一つ一つの土地が狭いからなのか、規模の小さいマンションが林立している。このようなマンションばかりの街にある竹の湯の常連客は、一体どこからやってくるのだろうか。少々不思議である。
 麻布十番駅から徒歩約10分で竹の湯に到着する。竹の湯はマンションの1階に設置されており、マンションの塔屋にある大きな「ゆ」の字が、南麻布の街にその存在を誇示している。
 中に入るとフロントがあり、その横に細長いロビーがある。ロビーには飲み物類の販売と、マッサージ椅子がある。
 竹の湯とはいかにも純和風の屋号であるが、その中身は洋風であると言える。脱衣室には古城のステンドグラスがあり、浴室には帆船「日本丸」のモザイクがある。
 脱衣室には通常の四角いロッカー32個の他に、スーツをハンガーにかけて入れることができる細長いロッカーも8個用意されており、仕事帰りの私としてはありがたい限りだ。脱衣室には、ドライヤー1個(利用料20円)と洗面台2基もある。
 浴室に入る。ここの浴室は、標準的な東京の銭湯に比べると少々狭い。洗い場は20箇所。他にシャワーブースが2箇所ある。この洗い場は、島状のものが2列あり、そこでは客同士が向かい合って洗い場を利用する方式になっている。このこと自体は別に珍しくもなんでもないのだが、カウンターと鏡の間の隙間から、反対側に座っている人の××(「おイナリさん」とでも言おうか)が丸見えになっている。そして、それがあたかも鏡に映っている自分のおイナリさんであると錯覚してしまうような位置関係になっているのである。思わず「えっ、自分のおイナリさんってこんなんだっけ?」と見入ってしまう。いやはや、銭湯内では目がよく見えることはかなり問題がある。
 そして、この竹の湯の最大の特徴と言えば、その天然の黒色の鉱泉「黒美水」だろう。この鉱泉は、温度が低いので、竹の湯にて加温されているが、正真正銘の天然の鉱泉である。「黒美水」の名の通り色は真っ黒で、湯船の湯は透明度が非常に低く、15cm程度の深さまでしか見えないほどである。湯温は45℃。大変熱い。
 丁度今週から朝日新聞の朝刊に、銭湯に関するシリーズ記事が出ていたが、その中になぜ東京の銭湯の湯温がこんなにも熱いのかの理由が書いてあった。大きな理由としては、重労働をして汗をかいている客が、熱い湯に入って汗を押し流し、爽快な気分になるようにする効果を必要としたためといった趣旨のことが書いてあった。しかもその記事によれば、東京の人は見栄っ張りなので、熱いとは絶対に言わないのだそうだ。
 見栄っ張りなのか、本当に熱い湯が好きなのか、それともあきらめに近いものなのか。東京の銭湯は実に奥が深い。
 竹の湯の鉱泉「黒美水」は1リットル20円で販売されている。利用方法としては、「黒美水」1に対して、水道水を4の割合で混合して、家庭の風呂で使用するのだという。ポイントは、「黒美水」で洗顔の仕上げをするのが良いのだという。
 また、とある業者が、この「黒美水」を濃縮して販売したらどうかと持ちかけたらしいが、その濃縮機械が非常に高価なので、竹の湯のご主人はこの誘いには乗らなかったらしい。私はこの決断を支持したい。「黒美水」は、広い銭湯で楽しんでこそである。銭湯へ行くのが面倒臭いと言って、濃縮「黒美水」を買いだめし、自宅で「黒美水」を楽しんでいては、ますます体を動かすのが面倒になるのではないか。
 竹の湯によれば、「黒美水」はもともと、火山灰、古代の植物、海底の泥が、長い年月をかけて泥炭などに変化し、ろ過され、地下水に溶け出したものであって、ミネラルが非常に豊富なのだという。「黒美水」は自然の恵みそのものなのである。
 ちなみに、竹の湯の鉱泉は、神経痛、筋肉痛、関節痛、腰痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病に効くのだという。「黒美水」ありがたや。

12歳以上400円、6歳以上12歳未満180円、6歳未満80円、サウナ料金500円(サウナ4回利用ごとに、5回目はサウナ無料)


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
東京都港区南麻布1-15-12 900円 × 15:30〜23:30 月曜日(祝日の場合は翌日休)

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2005年6月17日(金)



 
 戻る
inserted by FC2 system