十勝岳温泉 凌雲閣
(Tokachidake Onsen Ryouunkaku)



 北海道取材5日目である。本日は、旭岳、十勝岳、富良野、夕張を経由して千歳へ向かう。途中立ち寄ったのが、今回紹介する十勝岳温泉である。
 十勝岳温泉にはいくつかの温泉宿があるようだが、今回紹介するのは湯元である凌雲閣である。この凌雲閣の名の由来は、雲をも凌ぐくらいの高い標高にある温泉旅館という意味である。それもそのはず、ここの標高は1,280mであり、北海道で最も高所にある温泉旅館なのである。
 今日は朝からあいにくの雨。しかも、標高の高い旭岳、十勝岳はことごとく霧で包まれた。凌雲閣はそんな霧の中から突如として姿を現してくれた。視界はわずかに30mくらいである。今日は残念ながら露天風呂からの眺望は望めそうにない。断っておくが、この眺望こそ、陵雲閣のアドバンテージの一つなのである。
 我々取材班が凌雲閣に到着したのは8:40。ちょうど浴室は浴槽の湯の入れ替え作業を行っており、30分ほどロビーで待つことになる。ロビーには、ゴンタという名の大きな老犬がおり、愛嬌を振りまいている。
 入れ替え作業が終わったようなので、地下の浴室へ向かう。浴室には透明な湯の浴槽が2つと、真っ赤な色の浴槽が1つあり、露天風呂も真っ赤な色の浴槽が1つある。まずは露天風呂へ。湯温は結構ぬるい。露天風呂の浴槽は2つあるが、冬期は手前の1つしか使用しないとのことで、手前に入る。やはり今日は眺望が拝めない。運が良ければ十勝岳の大パノラマを堪能できるはずである。また、もっと運が良ければ、野生のキタキツネが湯船の近くにまで姿を見せることもあるようだ。
 内湯の浴槽も結構ぬるめで長湯が可能だ。そして内湯の最大の特徴は、大きな岩が鎮座していることだ。この岩、コケまで生えている。そして、奥には、飲用可能な湯が湧き出ている箇所があり、コップが置いてある。私が胃が弱い(下痢体質)ので、飲まなかったが、便秘の人には効果があるらしい。それにしても、この大きな岩は一体どうやって浴室へ運び込んだのだろうか。
 大きな岩を入れるだけの開口部は浴室にはない。開口部があったとしても、またクレーンがあったとしても、これだけの岩を建物内へ入れるのは不可能だろう。ということは、この岩は元々ここにあったということだ。自然に存在した岩をそのまま建物の中に取り込んで、内湯の顔にしてしまう。これこそが日本の温泉の心ではないだろうか。自然を支配するのではなく、自然の恵みをありがたく頂戴して利用させてもらうという謙虚な心そのものが、この十勝岳温泉が教えてくれる温泉の心である。
 尚、露天風呂はかつては混浴であったが、今は男女別々になっている。混浴だった頃は、水着で入浴していた人がいたと思うが、この真っ赤な泉質では、水着は一発で台無しになってしまうことだったろう。
 ちなみに、十勝岳温泉には2本の井戸があり、それぞれ別々の効能がある。一号井は酸性・含鉄(II)−アルミニウム・カルシウム−硫酸塩泉(低張性酸性温泉)で、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病、月経障害、動脈硬化症、きりきず、やけどに効果があるという。そして、飲用としては、慢性消化器病、貧血、慢性胆のう炎、胆石症、慢性便秘、肥満症、糖尿病、通風に効くという。
 二号井の方は、カルシウム・ナトリウム−硫酸塩泉(低張性中性高温泉)で、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、動脈硬化症、きりきず、やけど、慢性皮膚病に効果があるという。そして、飲用としては、慢性胆のう炎、胆石症、慢性便秘、肥満症、糖尿病、通風に効くという。
 十勝岳温泉は、その類まれな資質で、これからも登山客、山岳スキー客、観光客、温泉ファンを楽しませてくれるだろう。但し、この宿は大変な人気があるようで、特に夏は半年前から予約で一杯になるらしい。要注意である。
 明日は、いよいよ北海道取材最終日。かの登別温泉へ向かう。

大人800円、小学生600円、未就学児無料、宿泊者は無料


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
北海道空知郡上富良野町
十勝岳温泉
800円(宿泊者は無料) × 要問合
無休(要問合)

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2007年5月3日(木)



 
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