竹乃湯
(Takenoyu)



  今まで、いくつかの下関の銭湯を巡ってきたが、「次こそはぜひ行きたい!」と思っていたのが「竹乃湯」さんである。じつは、下関でよく乗車するタクシーに銭湯好きの運転手さんがおり、「竹乃湯さんはええよ〜。」と聞かされていたのである。銭湯好き運ちゃんオススメ! ともなれば、ぜひ行かねば!と足を運んでみた。


 まず外観は、三角屋根の木造の家屋。壁に「竹乃湯」と直接かかれた文字が、湯治場といった昔ながらのたたずまいである。玄関入口は波型の曲線が形づくられ、モダンな雰囲気も醸し出している。


 ドアを開けると「いらっしゃい〜!」という女将さんの声と、やさしい笑顔が迎えてくれる。明るく温かみある雰囲気と清潔感は、古い建物ながら、長い間、丁寧に銭湯を守ってきたからこそ感じる空気である。

 築50年以上という建物には、古い銭湯アイテムもたくさん。なかでも、筆文字で書かれた木製ロッカーは、要注目! 毛筆でのびのびと書かれた文字は、なんだか、小学校のお習字の時間を思い出してしまう懐かしさである。また丸い籐籠や扇風機、肩もみマッサージ機、お釜ドライヤー、赤ちゃんの着替え台も健在である。

 室内は、ベージュやエメラルドグリーンのペンキが一部塗られ、トイレはグリーンと赤茶の配色である。これらはすべて、ご主人が色のバランスを考えられたという。浴室は、今までの下関の銭湯同様、真ん中にどかんと大きな浴槽があり、右手に薬湯といった配置。天井の湯気抜きは中心が四角に空いている「唐傘天井」という構造のものだそうである(下関広報紙083より)。


 訪れた日は、お年寄りの銭湯サービスデーということもあり、年配のお客さんが多く、賑わっていた。おばあちゃん同士、久しぶりの会話に話がはずんでいる。女将さんは、ひとりひとりに声をかける。途中、おばあさんが浴室内でこけてしまったりとアクシデントが起きたが、女将さんはあわてることなく、ケガをしたお客さんの手当てをしたり、お世話をしたりと大忙しである。「このあたりは一人暮らしのお年寄りが多いですから。いろんなことが起きるんです。いろいろ勉強させてもらってるんですよ〜。」とにっこりと笑いながら話す女将さん。なんだか、こちらも自然と笑顔になってしまう。

 この女将さんにたくさんの人が元気をもらっているんだろうな〜。タクシーの運転手さんの「オススメ」の意味に深くうなずいてしまうのであった。

竹の湯外観
入口の波型アーチがモダンである
竹の湯看板
水色で流れるようにかかれた文字。銭湯風情がただよいます
竹の湯靴箱
ロッカーとおそろいのように並ぶ木製の靴箱。丁寧に作られています
竹の湯番台
女湯から番台に座る時は、梯子を使って「よいしょ!」と登ります
番台の下にも下駄箱あり(この下駄箱のタイプはとても珍しいそう←町田忍氏談)
竹の湯籠
丸い籐籠も大切に使われています
竹の湯トイレ
銭湯ご主人が作られた絶妙な配色のトイレ。脱衣所のちょっとしたアクセントになっています
竹の湯ロッカー
一〜十二まで書かれ、その後右上に小さな「キ」の一〜十二になっている
竹の湯までの道
名池中学校から竹の湯までの道は、市中心部と思えないほどひっそり。板塀と石組み、曲線が美しい
階段2つ坂ひとつ


§追記§
 さて、竹乃湯さんは、下関の中心部・上田中町の丘の上にある。バスで手軽に行けるのだが、ここは是非、港町・唐戸から坂を登って辿り着いてほしい。私は、今回、下関市役所・大国神社の裏手から坂道を登り、名池小学校を通り、名池中学校を左手(東側)に見ながら坂を登り、竹乃湯さんへ行くコースをとった。

 名池小学校への坂道は、くねくねと曲がるたびに風景がかわり、振り向くと下関の街が一望できる。名池小学校は作家・林芙美子が通った小学校で記念碑も。

 名池中学校西側の道は、中心地でありながら、突然、うっそうとした竹林が出現したり、ちょっとしたミステリースポット。坂道でかいた汗は、銭湯で流して!
 
竹の湯までの坂
市役所から、名池小学校までの坂道は、関門大橋を望むことも
林芙美子碑
坂道を登りきったところにある名池小学校。林芙美子は、この小学校に通っていたんですね


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
山口県下関市上田中町8-12-4 360円 × × 15:00〜22:00 金曜日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2009年12月29日



 
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