煙突も、もちろん薄いエメラルドグリ ーン |
今回、訪れたのは、私の生まれ故郷・下関の銭湯である。恥ずかしながら、銭湯好きと公言しながら、地元銭湯には全く足を運んだことがなかったのだ。まずは下関が生んだ詩人「金子みすず」も入ったという歴史ある銭湯「喜楽湯」でデビューを飾ることにした。 関門海峡沿いに走る国道9号線から入る坂を登って行く。坂道といい、坂に続く路地や階段といい雰囲気が何ともいえずいい。少し歩くと、右手に淡いエメラルドグリーンのペンキが塗られた洋風建築を発見! これが、今回目指す「喜楽湯」だ。このレトロなたたずまいといい外観だけでも、十分「心そそられる」銭湯である。 半円形の目隠し板が施された男女別々の入口から、中へ。天井は格子模様、昔ながらの番台、丸かごの脱衣籠、体重計。小さい頃良く行った「ボンジュール」のパン屋さんのペンキ看板もある! う〜懐かしすぎる。そして特徴的なのは、浴室のガラスが大きく、扉も開けっぱなし。のれんをくぐると、すぐに脱衣所、浴室が見渡せるとっても開放的な造りなのだ。 浴室は、関西式と言われる浴槽が真ん中にドンと置いてあるタイプ。その周りを囲むようにオバチャンたちが、体を洗っている。この関西式真ん中浴槽は、初体験であるが、浴槽の周りで皆が集うような雰囲気。黙々とシャワーに向って各々体を洗うのと違い、まるで井戸端会議のようにお客さん同士で会話がはずむ。この浴槽があるだけで長居してしまいそうな気がする。 奥には、入浴剤の入った湯と気泡湯と水風呂がある。お湯は熱め。東京銭湯山の手エリアと肩を並べるくらいの熱さである。そして注目は蒸気サウナ。これがまた熱い!常連のオバチャンらによると、「これがええそっちゃ。普通のサウナやと体が温まらん!」とのこと。何回も繰り返し入るエネルギー! さすが下関のオバチャンである。 ちょうど、夕方に入った銭湯にはガラス窓いっぱいに、夕日が射し込んでくる。暖簾の向こうからは海からの潮風。ほてった体をさますのにはちょうどいい。まさに港町ならではの銭湯だ。 番台に上品に座る奥さんにお話を伺った。この銭湯は、ご両親が戦後に買い取り、銭湯を始めたこと。浴室に入る時に少し、突き出た凸型構造になっているのは、ご両親が全国を旅行されて、各地の銭湯を見てまわった結果、採用したものだということ(実際、ここはちょっとした踊り場になっているため、浴室からあがって脱衣所に行くまでの急な温度変化を防ぐ役割があるのだとか)。室内もエメラルドグリーンのペンキが施されているのは、お母様がこの色がとても好きだったこと。お母様は7年前に亡くなったけれど、この銭湯をとても愛していたので続けていることなどをお話してくださった。そして、帰り際には「また帰省した時は寄ってらっしゃいね」の一言。 ぬくもりあふれる銭湯「喜楽湯」。下関初体験の銭湯がここで良かった! と思いながら坂道を下った。 *********************************************************** ※おまけ情報 下関の銭湯情報が掲載された情報誌「083 うみやまたいよう」が下関市から発行されています。なんと町田忍先生が、下関市のディープな銭湯を取材。銭湯以外にも、「橋」「昭和のにほひ」などの切り口で地元の人々が暮らしている目線で感じる下関の魅力を紹介! 読み応え十分。(HPからも読めます) 銭湯ファンならずとも必読です。 |
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2階にある「やよこニットルーム」とい うのも気になる |
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入口には、男湯・女湯ともに丸い目隠 しの仕切りあり |
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喜楽湯のあたりはすぐに山の斜面にな っていて、心そそられる路地がそこか しこに。今度は、路地裏散策もしてみ たい。 |
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下足箱と珍しい年代モノの傘立て。町 田先生によると、昭和30年代のお宝だ とか!現在は、杖立てにも活用。 |
住所 | 入浴料 | サウナ | TV | 営業時間 | 定休日 |
山口県下関市入江町7-13 | 360円 | ○ | × | 15:00〜22:00 | 水曜日 |
※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2008年8月某日