「新座(にいざ)」という市名は、大宝律令の公布(701年)後、奈良朝廷の力がこの地にも及び、渡来した新羅の僧や尼などを居住させる「新羅郡」が作られ、その後これが「新座郡」に改称されたことに由来するという。即ち、新座市の「新」には新しいという意味は全くなく、古代朝鮮の国「新羅」に由来しているということである。歴史というのは誠に奥深い。 今回紹介する鶴の湯は、埼玉県・新座市にある2つの銭湯のうちのひとつである。新座市にあるといっても、50mほど北西の方角へ行くとそこはもう埼玉県・志木市である。鶴の湯は、東武東上線・志木駅の南側にあり、志木街道から1本路地を入ったところにある。 鶴の湯のという屋号の銭湯はずいぶんたくさんあるようである。私も鶴の湯という屋号の銭湯を訪れるのはこれで3度目である。それだけ縁起の良い屋号だということなのだろう。何しろ「鶴は千年」という言葉があるくらいだ。 鶴の湯の開店は15:30。しかし、15:15には開店。常連客がぞろぞろと中へ入って行く。鶴の湯は典型的な大江戸破風造りの銭湯である。受付は伝統的な番台で、かなり高い位置にある。脱衣室には、石鹸類の販売、飲み物類の販売がある。 脱衣室のロッカーは壁際に28箇所あるのみだが、なぜか狭く感じる。それもそのはず、脱衣室の真ん中には、テーブルとテトリスのゲーム機(稼動できるのだろうか?)が陣取っており、テーブルの上には漫画が山のように置いてある。 通常、「入浴を終えた客はさっさと出て行って欲しい。」というのが銭湯側の本音ではないかと推察されるが、この銭湯はどうも違うようである。「入浴後は漫画でも読んでくつろいでいって欲しい。」とでも言っているかのようだ。 脱衣室内には、古い壁掛け時計、額がある。額は3つもあり、恐らく竣工時に建設業者かその従業員である職人が建築主に贈ったものだろうと推察される。こういうものを贈る習慣は建設業にはもうないのではと思うし、それを大切に保管しておくこともまた廃れてきているように思える。現代のように、コスト勝負だけで建設業が生きている時代にあっては、やむをえないのかもしれない。建設業者と建築主との心のつながりはどこへ行ってしまったのか。 外から脱衣室に入ると少々寒く感じたが、浴室は既に湯気がこもっており暖かい。これはありがたい。一番風呂は確かに気持ちの良いものだが、冬期は寒いのが難点である。このように湯気が立ち込めていれば暖かいではないか。 浴室の洗い場は24箇所。シャワーブース、サウナはない。浴槽は浅風呂と深風呂。浅風呂はマッサージ湯と気泡湯があり、深風呂は気泡湯。湯温は44℃で少々熱く感じる。 鶴の湯のご主人は埼玉県公衆浴場組合朝霞支部の支部長なのだそうだ。そして、この銭湯は、同組合に「家庭的な雰囲気のお風呂」と紹介されている。なるほど漫画が並んでいる脱衣室を見て、その通りだと思った。 (番台様、取材へのご協力ありがとうございました。) |
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住所 | 入浴料 | サウナ | TV | 営業時間 | 定休日 |
埼玉県新座市東北1-11-1 | 410円 (2006年 12月26日 改定) |
× | × | 15:30〜23:45 | 月曜日(祝日の場合は翌日休) |
※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2005年2月19日(土)