浩の湯
(Kounoyu)



 埼玉県・和光市は、昭和45年(1970年)、その前身である大和町が発展し、誕生した。その時、新しい市名は、一般住民から公募され、その応募作の中から審査決定されたものである。「和光」とは、「平和」、「栄光」、「前進」を象徴し、「市が明るく住み良い街に躍進するように」との願いが込められているそうである。

 今回紹介する浩の湯がある白子は、100mほど東へ行くと、そこはもう東京都練馬区という場所で、和光市の中でもほとんど東京のような場所である。

 浩の湯は写真にあるように、大変古く立派な破風造りの銭湯である。真っ白に塗られた壁が、清潔感を連想させ、大変に美しい。

 脱衣室に入ると、壁面に興味深い額や、飾り、かなり古い広告などがたくさんあり、実に雰囲気がある。ロッカーは71個。骨董級のマッサージ椅子が2個あり、そのうち1個は見たこともないような形のものだった。これは50円硬貨で動くらしい。その他、脱衣室には、飲み物類の販売、ドライヤー(利用料20円)、休憩スペースなどがある。

 脱衣室には、詩人・田村隆一のものと思われる詩が掲げられている。せっかくなのでここでその全文を紹介する。

  銭湯がすたれば、人情もすたる
  銭湯を知らない子供たちに
  集団生活のルールとマナーを教えよ
  自宅にふろありといえども
  そのポリぶろは親子のしゃべり合う場にあらず
  ただ体を洗うだけ
  タオルのしぼり方、体を洗う順序など
  基本的ルールは誰が教えるのか
  われは、わがルーツをもとめて銭湯へ

 浴室に入る。洗い場は全部で26箇所。背中合わせになっている洗い場同士の間隔は大きめとなっており、広々としている。

 浩の湯の造りは典型的な東京型破風造りであるが、浴槽は岩風呂となっており、趣向が凝らされている。岩はまるで溶岩のような趣である。浴槽は2層に別れ、片方が浅風呂、もう片方が深風呂である。深風呂は気泡風呂となっている。湯温は44.5℃。かなり熱い。ここの温度計には42℃〜46℃までの範囲の目盛に赤い帯が記されている。即ち、このことはこの銭湯では42℃〜46℃までの範囲の湯温であれば適温と見ている証である。

 埼玉県公衆浴場業生活衛生同業組合によれば、42℃以上の温度の浴槽を「高温浴」、39℃〜42℃までの温度の浴槽を「微温浴」と呼ぶそうである。高温浴では、強い温熱刺激により、神経痛やリウマチの鎮静効果があり、胃酸の分泌が抑制されるために、胃炎や胃潰瘍などの胃酸過多の人に効果があるそうである。一方、微温浴では、精神的鎮静作用があり、不眠症の人が20分〜30分入浴すると、効果があるそうである。

 いずれにしても、この銭湯では高温浴を標榜し、なおかつ「浴槽の湯温は自動的に制御されているので、勝手に水を入れないこと。」との旨の注意書きまで浴室に掲げられている。銭湯にとって浴槽の湯温維持は生命線のようなものなのだろうか。

 今日の外気温度は22℃。すがすがしい秋晴れの日である。銭湯に浸かって、田村隆一の詩をかみしめ、この銭湯も末永く続いて欲しいと思った。

(番台様、取材へのご協力ありがとうございました。)


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
埼玉県和光市白子1-24-39 410円
(2006年
12月26日
改定)
× × 16:00〜23:00 毎月6日、
16日、26日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2004年10月25日(月)



 
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