星と緑のロマン館
(Hoshi to Midori no Romankan)



 長野市から白馬村へ行くためには、通称オリンピック道路と呼ばれる県道31号線と33号線を通っていく。長野市にあった選手村から、白馬村のオリンピック会場へ選手達を運ぶために整備された快適な道路だ。この道路を経由して白馬村へ通うことの多い私にとって、途中にある小川村は単なる通過地点に過ぎなかった。但し、今日までは・・・。
 小川村の周囲には、鬼無里村、中条村、信濃新町、美麻村があったが、これら前三者は長野市に、美麻村は大町市に吸収合併された。しかし、小川村は頑固に「独立」を維持している。なぜか。それは、小川村には固有の自然、文化があるという自負からであろう。
 オリンピック道路は川筋にあるので標高が低く、そこを通って小川村を通過するだけでは、確かに小川村の素晴らしさは分からない。しかし、そこから今回紹介する星と緑のロマン館へ至る坂道(県道36号線)をどんどん登っていけば、やがて北アルプスの絶景を望めるようになる。この絶景こそが小川村の固有の自然景観だ。
 また、おやきで有名な長野県であるが、小川村にも固有のおやき文化がある。さらに、ゴールデンウィークには申年、寅年のみ行われる「御柱祭」がある(今年は5月3日開催)。オリンピック道路が通行止めになり、大木の丸太を引っ張りまわすこの祭りは、小川村全体が最も熱くなる時である。
 県道36号線をひたすら登ること約20分。標高1,000mの星と緑のロマン館へたどり着く。星と緑のロマン館は70名収容の宿泊施設だ。周辺には、テニスコート、グランド、コテージ、バーベキューハウス、ふるさと体験館、地場産センター、芝生広場、野外ステージ、遊歩道、天文台、プラネタリウムなどがあり、十分1日中楽しめる場所だ。これらはまとめて「星と緑のロマントピア」と呼ばれている。
 そんな施設で遊んだ後は、星と緑のロマン館にある風呂で汗を流そう。この風呂は、厳密に言えば温泉ではない。地下から汲み上げられた鉱泉を加温しているからだ。
 風呂は極めてシンプルだ。洗い場が4ヶ所あり、浴槽が1個。リンスインシャンプーとボディーソープが完備されている。サウナ、水風呂、上がり湯、露天風呂はない。
 特長はあまりない風呂なので、風呂だけ入るために星と緑のロマン館を訪れるのはあまり得策ではないだろう。周辺でアクティビティーを楽しんだ後に、この風呂に入るべきである。
 今回の取材で、小川村を単なる通過地点だと考えていた私は、その考えを改めさせられることとなった。白馬村、小谷村も小川村と同様に、「独立」をかたくなに維持している。それは、これらの村が独立していても十分にやっていけるという自信があるからに他ならない。自身の根源は、それだけの資質があるからだ。白馬村や小谷村には、スキー場や温泉、山岳リゾートがある。小川村には、北アルプスの景観の他、おやきや御柱祭といった固有の文化を有している。
 小川村は、このように独自の価値を育んだことにより、「日本の里100選」に選ばれ、「日本で最も美しい村」連合に加盟している。これからも、これらの価値が維持されて、小川村を訪れる人々を魅了し続けることであろう。
 ちなみに、小川村では、かつての会社の同僚であり、遊び仲間である友人が脱サラをして農業を営んでいる。彼が会社生活に終止符を打ち、ここを永住の場所に選んだ理由がやっと分かった気がした。
 「小川村は通過することなかれ。訪れて楽しむべし」である。

400円(大人、小人共)


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
長野県上水内郡小川村大洞高原 400円 × × 11:00〜20:00
(冬期は11:00〜18:00)
無休

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2010年5月2日(日)



 
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