船岡温泉
(Funaoka Onsen)



 もし、銭湯遺産なるものが世の中に存在するとすれば、船岡温泉は間違いなくその中の1つになるのではと思われる。そんな銭湯が今回紹介する船岡温泉である。
 京都市の北の方の住宅街に船岡温泉はある。船岡温泉の外観は見ての通りの木造の破風造りであり、フロントの女将さんによれば、築80年以上なのだそうだ。但し、奥にある浴室は昭和7年に鉄筋コンクリートに改築したとのことである。
 圧巻は脱衣室だ。欄間の部分には透かし彫りの彫刻があり、天井は格天井。世界遺産・二条城をまねて造っているのではないかと思われるほど立派な造りだ。加えて、色鮮やかで派手なタイルがあちらこちらに散りばめられているので、和洋が混在している様な造りだ。しかもすべてがピカピカに手入れされている。
 浴室に関しては、船岡温泉には大江戸銭湯にはない独特の構造とルールがあるようである。まずは前室。これは浴室と脱衣室の間にある空間である。このような空間は名古屋の銭湯でもお目にかかった。土地代の高い東京の大江戸銭湯ではこのような空間を造ることは不可能だったのではと思われる。船岡温泉では、ここに洗面器が集積されているので、ここを通過する際に洗面器を取って浴室に入ることになる。浴室から出るときは、洗面器をここに返却して、体をここで拭くことになる。船岡温泉ではこの前室を「洗面室」と呼んでいる。
 洗面室と中庭の間には「菊水橋」という名の石橋が設置されている。これは実際に近くにあった橋を移築したものなのだそうだ。
 浴室では、各洗い場に椅子が初めから据え置かれているので、自分で椅子を確保して運ぶ必要はない。洗い場は全部で31か所があちらこちらに分散されて設置されており、洗い場同士の間隔も余裕のあるものとなっている。変わっているのは、シャワーヘッドのレバーだ。前後に操作するタイプではなく、左右に操作するタイプになっている。
 浴室も脱衣室と同様に和洋折衷である。壁はタイル仕上げとなっており、洋式の宮殿のような雰囲気であるが、瓦も使用されているので和風でもある。
 浴槽は熱めの深風呂、薬湯と、適温の檜風呂、電気風呂、エスティ風呂(1人分)、ジェット風呂(1人分、いわゆる座風呂と同じ)、気泡風呂、ぬるめの露天風呂、うたせ湯(1人分)がある。エステ風呂ではなく、エスティ風呂になっているところがポイントである。
 サウナは15人ほどが入れる広さだ。温度計、時計、砂時計はことごとく設置されていないが、テレビは設置されている。サウナ内装は、珍しくタイルと石貼である。
 水風呂は露天風呂の隣に設置されている。つまり屋外設置というわけだ。龍の石像の口から注がれる水を背中に浴びることができるようになっているのだが、この水風呂、冬になるとかなり過酷な状況になるのではないかと想像される。水風呂ファン必見の銭湯だ。
 船岡温泉の浴室は全体的に広めで、いろいろな浴槽を楽しむことができるであろう。しかもサウナの追加料金は不要ときているので、入浴料金の410円だけで船岡温泉を隅から隅までしゃぶりつくすことができるだろう。
 ちなみに、船岡温泉はいわゆる温泉ではない。関西では温泉ではないのに「温泉」の文字を屋号に入れている銭湯が多いのは周知の事実である。
 船岡温泉は、二条城に匹敵する貫禄と歴史を感じさせてくれる、まさに銭湯遺産である。

12歳以上410円、6歳以上12歳未満150円、6歳未満60円、サウナ追加料金なし


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
京都府京都市北区
紫野南舟岡町82-1
410円 15:00〜25:00
(日曜、祝日は8:00〜25:00)
無休

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2009年8月7日(金)



 
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