翼山温泉
(Tsubasayama Onsen)



 一年ぶりに香川・高松へやってきた。東京から東名高速道、名神高速道、明石海峡大橋、大鳴門橋を通って、約700kmのドライブだ。鳴門で渦潮を見た後、鳴門市内で温泉に入ろうと思ったのだが、目ぼしいところを見つけることができず、引田にある翼山温泉までやってきた。
 翼山温泉は、国道11号線から近いところにあるので、鳴門から高松へ移動する途中に立ち寄るには至極便利だ。
 翼山温泉の玄関に来て、建物を見上げると「引田社会福祉センター」とある。ということは、この温泉の客は多分お年寄りばかりだろうと思っていたら、やっぱりお年寄りばかりであった。今日は平日なので、余計にその傾向が強かったのかもしれない。
 客層が何であれ、400円という入浴料金は安い。この値段でサウナも楽しめるのだ。東京の銭湯なら、サウナ追加料金を含めると、入浴料が800円以上というところも珍しくないのに比べると、400円は破格である。
 しかも、各洗い場にはシャンプー、ボディーシャンプーも具備されている。これらはいい匂いがして爽快である。洗い場はサーモスタット混合栓になっており、シャワーヘッドの圧力は申し分ない。洗い場は12箇所ある。
 浴槽は4つあって、一番奥が泡風呂、真ん中が泡のない大風呂、他に打たせ湯(1人分)、水風呂がある。浴槽の湯加減は、熱すぎず、ぬるすぎずで適温である。浴室の外は庭になっていて、窓際にベンチが置かれている。公式通りに庭を見ながら、浴槽に入ったり、出てベンチで休憩したりを繰り返している客もいた。
 サウナは室内温度94℃、定員7〜8人程度だ。室内は木のいい匂いがする。水風呂はサウナの隣にあって、水温はかなり低い。客層がお年寄りばかりだったせいか、サウナと水風呂で体をいじめている客はいなかった。
 フロントで確認してみたら、翼山温泉はかつては正式な温泉であったが、今は温泉の条件をクリアする水質ではないために、正式には温泉とは言えなくなっているとのことであった。ただ、ミネラルはそれなりに含まれているとのことである。
 翼山温泉を出て、高松へ向かう。このあたりの地名は、東かがわ市やさぬき市のような、新しいものが次々に出現しており、昔の地名を知っている者にとってはかなり困惑させられる。引田、白鳥、寒川、庵治、牟礼、志度などの地名が完全に消えたわけではないが、東かがわ市やさぬき市と言われても、昔と同じイメージは沸いて来ず、むしろ都会的なイメージが漂う。
 とは言うものの、翼山温泉の周囲は本当に田舎である。のどかな風景に、お年寄りに愛される温泉。ここだけは時間が止まったような感じさえ受ける。世界はめまぐるしく動き、あくせくと働く自分がいるが、人間には自然のリズムを取り戻す必要があると思う。自然のリズムを失ってしまうと、人間はいつか破綻するものだ。
 翼山温泉のお年寄りは、翼山温泉で自然のリズムを会得し、引田のままの存在であった。

大人400円、小人200円


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
香川県東かがわ市引田991 400円 × 10:00〜21:00(最終受付20:30) 火曜日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2008年8月8日(金)



 
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