仏生山温泉 天平湯
(Bussyouzan Onsen Tenpeiyu)



 2007年度グッドデザイン賞受賞施設。今回紹介するのは、その施設である。仏生山温泉。見るからにモダンな外観だ。温泉と言えば純和風の建築が多いが、仏生山温泉は、過度に和風の様式にこだわることなく、現代的な味付けを用いて、機能的でおしゃれな空間を演出している。
 外観と内装に使用されている主要な材料は、濃い色の塗装をかけた木材だ。この色合いが落ち着いた雰囲気を作り出している。外壁、内壁だけでなく、ゲタ箱、ロッカーまでもがこの色で統一されている。
 脱衣室と浴室は実験的レイアウトである。モミジの低木が植えられている中庭を取り囲むように、脱衣室が一辺、内湯が一辺、露天風呂が二辺に配置されている。
 内湯の中庭に面した部分はすべてが引き戸になっており、6枚の引き戸はすべて開け放たれている。このため、内湯は半分屋外のような状態になっているのだ。そして、これらの引き戸は冬には閉鎖されるものと思われる。
 脱衣室側も引き戸を開ければ、同じように半分屋外のようにすることができるが、今は脱衣室では冷房が効いているので、そのようにはしていない。冷房が必要なくなる春や秋には、引き戸を開放することができるかもしれない。
 洗い場は内湯に8か所、露天風呂に3か所あり、シャンプーとボディーソープは完備されている。内湯の床は石貼りになっており、先の木材と同様に落ち着いた雰囲気作りに役立っている。
 浴槽は、内湯と露天風呂では全く違った温度になっている。内湯の浴槽はちょっと熱めだが、露天風呂は33℃になっている。長湯を可能とするだけのためにこうなっているのではないようだ。実は科学的な根拠があるらしい。
 仏生山温泉の湯は美人の湯と言われる重曹泉である。通常の重曹泉は炭酸ガスと炭酸ソーダが豊富に含まれているが、浴槽に注水されて温泉水が大気圧下に減圧される時、浴槽の湯温が42℃程度だと、炭酸ガスが大気中に放出されやすい状態になってしまう。しかし、浴槽の湯温が33℃だと、炭酸ガスの大気中への放出は最小限に抑制される。湯の中に残された炭酸ガスは、体の表面に付着し、血行の流れをスムーズにし、老廃物を除去し、保温や冷え性に効果があるとされている。但し、33℃の露天風呂は夏だけ行われている。確かに、真冬に露天風呂で33℃の湯温だと、凍えてしまうだろう。
 仏生山温泉のサウナは変わっている。室内温度は30℃。床だけを温めるタイプだ。床の温度は45〜50℃くらいだろうか。この床の上に座ったり、寝転がったりすることが、仏生山温泉のサウナの正しい楽しみ方である。したがって、できる限り大きいタオルを持参することをお勧めする。床に直に肌をつけるとかなり熱いからだ。サウナ室内にある角材は、椅子ではなく、多分枕であろう。
 ちなみに、仏生山温泉はナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉(療養泉)で、神経痛、関節痛、筋肉痛、五十肩、運動麻痺、間接のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病に効くという。
 季節に合わせて、風呂の在り方を変えていく。これが仏生山温泉の本質である。グッドデザイン賞受賞の大きなポイントは、単におしゃれな施設であるということだけが理由ではないだろう。このような実験的な試みが高く評価されたからではないだろうか。

大人(中学生以上)600円、子供(3歳以上)300円、はり、きゅう、マッサージは3,000円〜


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
香川県高松市仏生山町乙114-5 600円 × 平日11:00〜24:00
土曜・日曜・祝日9:00〜24:00
(最終受付23:00)
第4火曜日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2009年8月13日(木)



 
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