仁王門
(Nioumonyu)



 「大須」という地名は、もともと岐阜羽島市大須に由来するという。岐阜羽島市大須にあった北野山真福寺が、徳川家康の時代にこの地に移されたのが始まりだという。この結果、この地の地名も「大須」となった。そして、移された寺は「大須観音」と呼ばれているのである。
 この大須観音の入口にあるのが、立派な仁王門である。仁王門には、その名の通り、真っ赤な仁王様が2体おられるが、今回紹介する仁王門湯は、まさにこの仁王様の名を配した銭湯なのである。
 仁王門湯は、大須観音に程近い、東仁王門通りという名の商店街から、1本路地を北へ入ったところにある。
 名古屋の銭湯に入浴するのは今回が初めてなのだが、その中身は東京の大江戸銭湯とはかなり異なっており、私にとって新鮮味のあふれるものだった。
 まずは脱衣室。目の前に飛び込んでくるのは、扉にガラスがはめ込まれた木製のロッカーである。かなり古いもののようであるが、実に味のあるつくりである。ロッカー個数は65個。脱衣室には、骨董級のマッサージ椅子が2つあり、ドライヤー、石鹸類の販売、飲み物類の販売がある。
 さて、次は浴室、といきたいところだが、脱衣室と浴室との間には奇妙な空間がある。いわば浴室の「前室」と言ったところだ。この前室、あるHPによれば、「中庭」と呼ばれている。しかし全然庭のようには見えない。前室には、左に洗面台、右にサウナがあるだけで、一種の通路のようになっている。
 一体この前室は何のためにあるのだろうか?不思議である。推測するに、浴室から出てくる客が、ここでタオルで体を拭いてから脱衣室に戻るためにある、と考えるのが自然だろう。そうすれば脱衣室が濡れずに済むし、客も暑い浴室で汗をかきながら体を拭くという非効率なことをしなくて済む。
 また、浴室と脱衣室の間の空気の往来を最小限にするという効果があるものと思われる。つまり、浴室から脱衣室に湿った空気が入らないこと、脱衣室から浴室に冷たい空気が入らないこと、を狙っているものと推察される。
 その前室の洗面台にはどういうわけか洗面器が無造作にたくさん置いてある。この理由は浴室に入ってから判明した。どうやら名古屋の銭湯では、椅子や洗面器を浴室入口近くに集めて整理して置くという習慣がないようだ。客は使用した椅子や洗面器を、使用した場所に置き去りにしていく。東京では、皆きっちりと元あった場所に戻すのだが、それは名古屋の流儀ではないらしい。このため、浴室から脱衣室に戻る時に、前室で洗面器を使用した客が、そのまま前室に洗面器を置き去りにしていくものと推察した。実際、浴室内には洗面器があまりなかったのである。
 名古屋の銭湯のもう一つの特徴は、(もしかしたらこの銭湯だけなのかもしれないが、)各洗い場にカランが1個しかないということだ。東京では、各洗い場には必ず湯のカランと水のカランがある。しかし、ここには湯のカランしかないのだ。従って、客が自分の好みの湯温に調節することはできない。しかし、これは考え方を変えれば、勇気のある設備だと思う。つまり、銭湯側は、客が湯で火傷もせず、客から「湯がぬるい。」と文句も言われないようにしなければならない。供給する湯温の制御によほどの自信がないとこのような設備にはできないだろう。実際に湯温は適温だった。
 洗い場は16箇所あり、他に立ちシャワーがある。洗面器は黄色いケロリン、椅子は板バネのようなサスペンション椅子である。
 さて、最後に浴槽である。湯船は全部で6つあり、前室に一番近いところに水風呂がある。サウナとの距離を考えてのことだろう。一番奥には超音波気泡浴があり、2人分のスペースがある。浴室の中央には1つの浴槽があり、4つの湯船に仕切られている。うち3つは深風呂で、残り1つが浅風呂である。深風呂は、大きな深風呂、小さいが湯温が若干熱めの深風呂、電気風呂という構成になっている。電気風呂にはその旨の表示がないので、電気風呂が苦手の人は注意が必要である。
 サウナは追加料金100円で入ることができる。しかし、サウナ室内の照明は消されているようで、利用している人もいなかった。定員は4人程度である。
 仁王門湯は、私に始めての名古屋銭湯を体験させてくれた。それは明らかに東京の大江戸銭湯とは違っているものだった。そして、ここをはじめて訪れる人は、仁王門と大須観音をも訪れるべきである。
(番台様、取材へのご協力ありがとうございました。)
大人380円、小学生150円、未就学児70円、サウナ追加料金100円


住所 入浴料 サウナ TV 営業時間 定休日
愛知県名古屋市中区大須3-37-20 480円 × 14:00〜23:00 火曜日

※ 入浴料はサウナ料金込で表示
※ TVはサウナ内にTVがあるかを表示
取材:銭湯愛好会東京支部
取材日:2005年4月7日(木)



 
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